カフェ・オレ
「………なんでこれみよがしにカフェオレなんだよ……」
「お代わり自由になった記念」
「アンタいつもはアメリカンコーヒーだろうがッ! アメリカンもお代わり自由だぞ相変わらず!!」
「君に勧めたわけではないんだからいいだろう」
「牛乳くせーんだよ…」
僅かに身を離して鼻の頭に皺を寄せた子供に、まさにこれみよがしに唇に寄せたカップにふう、と息を吹き掛けて大人はしれっと答えた。
「ま、アメリカンとの併用はできないらしいんでね。今日は諦めてくれたまえ。なんなら君は帰ってもかまわな、」
「あ、オレアルにポンデ・リング買ってってやろ」
そっぽを向いていささか声量を上げた白々しい態度の子供に、大人は溜息を吐きながらはぐらかされてやることにする。
「君、ポンデ・リング好きだよな」
「好きだぜ、あのもちもちしてるとこが」
カウンター席から立ち上がり、大人の背後を通りすがるついでに、伸ばされた手がむに、とその頬をつまんだ。
「アンタのほっぺたみたい」
含みのない素の声が告げて、子供はすたすたとレジヘと向かう。
残された大人は。
視界の端で談笑をやめてしまったOLたちの奇異の視線を感じながら、育て方を間違えたな、と苦い顔で額を抱えた。
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