映画で兄さんが同棲している相手がアルのそっくりさんではなく大佐のそっくりさんだったらどうなるのかなと思ったら意外にいけそうだったので書いてみますよエドロイ。という結構投げやりいい加減なエドロイ。
凄く愛がない。兄さんの頭はアルでいっぱい。たまに元の世界の大佐を思い出す。そっくりさんのことは微塵も気に掛けてない。そういう話。
それで平気という方のみどぞ。アニメ好きなひとには向きません。
「…………ふ、…う………っん、」
酷く控えめに喘ぐ様に扉の向こうにおいて来た、生きているのかどうかも解らない黒髪の男を思い出す。
エドワードは優しくその黒髪を撫で頬に口付けて、ゆっくりと、焦らすほどに緩く入り口まで抜いていた自身を埋め直した。溶けたヴァセリンが微かにぬめついた音を立てる。組み敷いた男の吐息が微かに震え、閉ざされた瞼の奥で眼球がぐるりと動く。
こんな風に愛しく抱くと、あの男は酷く怯えた。
乾いて割れた唇を柔らかに食みながらそう考えて薄く瞳を細める。明度の落ちた視界にあの黒い眼が重なって、食んでいる唇へと思わず剥きそうになった牙を堪えて代わりに舌を差し込む。
ほとんど暴力のように、唇を手を指を噛んで耐えねばならないほどに手酷く抱いてやったほうがあの男は安堵したし、快感よりも苦痛を望んでいる節があった。
それはあの男の抱える深まるばかりの罪悪感から来る自虐で、その道具に使われているのだと思うと腹が立ったから正当な報復のつもりで幾度も犯して来たけれど、それすら結局はあの男の思うつぼで、それが酷く悔しくて時折優しく愛しく抱いてあの男を不安にさせた。
その嫌がらせは功を奏して、優しく緩い律動にあの男は大抵震えてどう喘げばいいのかも解らないと言うように唇を戦慄かせて怯えた濡れた眼でエドワードを見つめた。
エドワードはいつもその眼に酷く欲を煽られて結局最後には手酷く抱くことになってしまっていたから、いつだってあの男の優位に立てたことなどない。
深く穿ったまま何度か腰を押し付ける。その互いの肌が密着したまま内部に感じる圧迫感に緩く背を反らせ、男は微かに喘いだ。いっそ温いほどに柔らかに抱いてやっているにも関わらず、同性を受け入れることに慣れてない男はきつく眉根を寄せて苦痛の色の濃い表情を晒す。戦慄く唇からは喘ぎ方も解らないというように吐息ばかりがこぼれて、それが、快感と苦痛に耐え声を上げまいと必死に唇を噛んでいたあの男のそれと重なる。
一度だけ、この肉体のあらゆる部分がかつての情欲の相手と酷似したこの男を、手酷く抱いたことがある。
男は酷く怯えて突き上げるたび喉を絞るような割れた悲鳴を洩らし苦痛に泣いた。止めてくれ、と懇願する声色は確かにあの黒髪の軍人と同じものなのにその言葉が違って、エドワードは酷く落胆した。それ以来エドワードはこの男に暴力的な扱いをすることをやめた。そうしたほうが、その垣間見える反応が、扉の向こうの男に似ることが解ったからだ。
「………エド?」
囁きに眼を上げると、瞼を開いた男がふっと瞬いた。
「何を、考えてる……?」
「あんたじゃないヤツのこと」
男は無言で頷いて、僅かに思案するようにエドワードを眺めた。
「『アル』、のこと、」
ごつ、と鈍い音がして顔を背けた男が弾かれたようにエドワードを見上げた。その真っ暗な眼に怯えが宿っているのを見てとり、エドワードは反射的に殴ってしまったことに気付く。生身の左手がじわりと痛んだ。それと連動するかのように、男の頬に興奮の朱とは別の赤みが徐々に広がる。ああ冷やさなければ明日には酷い顔になるな、と考えながら、エドワードは無表情のまま男の額を撫でた。
「ローイ……? どこからその名前を訊いた?」
「き…みが、」
「オレが?」
ごくり、と喉が鳴る。腹に触れていた下肢はすっかり萎えて、ああまったく臆病な男だ、とエドワードは小さく息を吐きことさら優しく額を撫でた。
「殴ってごめんな。言えよ、もう怒んないから。オレがどうしたって?」
男は震える睫を伏せ視線を彷徨わせた。
「………寝言でそう、何度か呼んで」
「ああ、………そっか。そうかもな」
アルフォンスの夢ならば寝ても醒めても見ないことなどない。
ならば無意識にこの口に上ってしまったとしても不思議ではないな、とは思ったが、こんな下劣な行為の最中にその神聖な名を出されたことに再び腹が立って、エドワードはいささか乱暴に埋めていた自身を抜いた。ぴく、と震えた男はひとつ息を吐き、再び突き上げられるのを待つかのように目を伏せたがそのまま離れた熱に不思議そうに瞬いた。
「エドワード?」
いい加減なカンジで続く。
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