「…………君さ、ボクのこと嫌いだろ」 長い口付けを終えて静かに息を整え、僅かに頬を上気させたまま言ったアルフォンスに既に机へ向き直り万年筆を手にしていたエドワードは冷ややかな視線を流した。 「そうだな」 「どこが嫌い?」 「アルじゃないところ」 「は?」 ぱちり、と瞬いて、その『アル』が自分ではないことに気付きアルフォンスは眉を顰めた。 「ああ、そう」 「眼の色も嫌いだな。稲穂みたいな金色が綺麗だったのに」 「生憎ボクは生まれつきこうなんだよ」 むす、と軽くむくれてアルフォンスはぎ、と椅子へ寄り掛かった。小さく首を傾げる。 「ボクは君のこと好きだな」 「キスをするから?」 うん、と頷き青年はあえかに笑う。 「キスするから」 エドワードはゆっくりと眼を逸らし、図面に万年筆を走らせながら面白くなさそうに呟いた。 「────そういう簡単なところは、あいつと同じだから好きだよ」 「なんだよ、簡単て」 「そのうちセックスもしてやろうか」 「やだよ気持ち悪い」 蜜月の恋人たちのような濃厚な口付けにも容易く慣れてしまった青年の至極もっともな返事に、エドワードは薄く嗤ってそのうちな、と呟いた。 |
■2006/3/9 リヒの性格などまるで知らなかった頃のエドリヒ。背がエドより高いということしか知らなかった気がします。
初出:2005.04.16