愛している、と言い続けていなくては不安で潰れそうだったのは、あの小さな子供への感情だ。 今でも彼を思い出すと世界は色を失い、白と灰色のモノクロームへと姿を変える。 あの、無垢に父を慕う何も知らない小さな子供を救えず自分だけが長らえた私を。 私を信じ、私を支える過程で命を落とした親友の死を、その心、を、 (……マース) 私は目を閉じる。 あの子のあの眼、が、私を走らせた。 あの───断罪を、支配を求める感情は愛だ、と私は信じている。境地にある彼を、まるで崇拝するかのように愛したあの感情は彼女への愛とは似ても似付かないものだが、それでも、 「准将、お待たせしました」 私ははっと目を開いた。彼女が微笑んでいる。 そこに彼はいるのだろうか。弟と引き替えに、その全てを失った彼は。 (もし…アルフォンスが理論を完成させたとして) 人体錬成に代価が必要になったとしたら、この身を与えよう。 ───高みに。 僅かに目眩う。雑踏が、彼女が遠い。 彼女の言葉に微笑み答えながら、私は遠くはないはずのその日に心を馳せた。 |
■2006/3/9 アニメエドロイっていうかアニメロイ。「ナルシストの絶望」ってタイトル付けてたみたいです。
初出:2004.12.27