「アル、オレさ」
 うん、と相槌を打ちながらアルフォンスはオイル缶にボロ布の端を浸し、きゅ、きゅ、と音を立てて腕を磨いた。兄の言葉は続いて来ない。
「兄さん?」
 無言。
 眠っちゃったのかな、とベッドにごろごろとしていた兄を振り向くと、兄はいつの間にか起き上がり胡座を掻いて俯いていた。アルフォンスは首を傾げる。
「兄さん?」
「うん」
「どうかしたの」
「……うん」
 
 なんなの気持ち悪い。
 
 口籠もる兄はもじもじと足首を掴んだ手を蠢かせ、髪から覗く耳は真っ赤だ。酔っぱらってるわけじゃないよね、と先程一人で夕食とりに出た兄を不審に思いながら、アルフォンスは鼻が利かないことを少し残念に思った。嗅覚さえあれば、兄が素面であるかどうかくらいはすぐに解っただろうに。
「気になるんだけど」
 エドワードはゆるりと顔を上げた。
 
 うわあ。
 
 口を一文字に結んだその顔は熟れたトマトのようになっている。
 まさか熱でもあるんじゃ、と驚いて、アルフォンスはがしゃんと身を乗り出した。
「どうしたの兄さん、風邪でも引いた? 具合悪くない?」
「え?」
「顔が真っ赤なんだけど」
 あ、と呟いて口元を左手で覆い、目を逸らしたエドワードはいやいや大丈夫、と右手を振った。
「なんでもない」
「なんでもないって……」
「いやほんと、熱とかじゃねーから。って、いや」
 これも熱なのかな、とぶつぶつと呟く兄に僅かに引いて(だってなんか気持ち悪い笑い方してる)、アルフォンスは「そ、そう」と返しがしゃんと再び背を向けてボロ布を手にした。鎧を磨き出す。
 なんだか居心地の悪い沈黙が部屋を満たした。
 
 なんなのこのひと。
 
 背中に熱い視線を感じる。
 アルフォンスはその視線の熱さと対照的な寒気を感じたように思ったが、気付かないふりでオイル缶に手を伸ばした。
「………なあ、アル」
「な、なに?」
 僅かな逡巡の気配。
 溜息を吐くように、エドワードの声が低く落ちる。
「オレさ、………好きなひとが出来たんだけど」
 
 なんだそんなこと。
 
 ほっと安堵して、アルフォンスは首を回し肩越しに兄を見た。
「知ってるよ」
「────は!?」
 アルフォンスはくすくすと笑う。まさか気付かれていないとでも思っていたのだろうか。
「ウィンリィでしょ?」
「………へ?」
「バレバレだよ、兄さん」
「いや何言ってんだお前。なんでオレがあんな凶暴女を」
 アルフォンスは眼窩の赤い光を瞬かせた。
「ウィンリィじゃないの?」
「ちげーよ!」
「じゃあ誰。………中尉?」
 かしゃん、と小首を傾げたアルフォンスに、エドワードはぶんぶんとかぶりを振る。アルフォンスは困惑した。
 
 えーと、他に女の人って………。
 
(うわ、ボクら女の子の知り合い少ない!)
 ちょっとショックだ、と考えながら、アルフォンスはオイル缶に手を乗せたまま兄へと身体を半分向けた。
「他に誰かいたっけ……? あ、ここのおかみさんとか」
「違うっつの」
「じゃ、さっき兄さんが出掛けた食堂の給仕のひととか」
「オレそんなに惚れっぽく見えるのか…?」
 
 じゃあ何なんだよ。
 
「……ボクの知らないひと?」
「いや、……よく知ってる」
 再びエドワードは頬に血を昇らせ俯いてかりかりとこめかみを掻いた。逆上せたようなその顔に、アルフォンスは少し心配になる。
 
 やっぱり熱があるんじゃないのかなあ。譫言だったりして。
 
「ねえ、誰? 教えてよ」
「……………」
「気になるってば」
 強請るように急かすと、兄はますます俯いてぼそりと何か呟いた。アルフォンスは僅かに身を乗り出して耳を傾けるように首を傾げた。
「え、なに?」
「………だから、大佐」
 
 やっぱり熱があるんじゃないかな。
 
 アルフォンスは溜息のような声を洩らしてかぶりを振った。
「兄さん、言葉の使い方がおかしいよ」
「へ?」
「『好きな人が出来た』なんて言うから、てっきり好きな女の子が出来たんだと思ったのに」
「いや、そりゃ女じゃないけど」
「そういうときはさ、大佐が好きって言えばいいじゃない」
「………や、お前が吃驚するかと思って」
 そりゃあねえ、とアルフォンスはおっとりと声に笑みを混ぜる。
「兄さんって大佐に食って掛かってばかりだもんね。でもボクも大佐は結構好きだよ」
「────は!?」
 
 なんでそんな素っ頓狂な声出すんだよ。
 
「底が解んないひとだけど、恩人だしね」
「あ……そ、そういう意味か」
 ほ、と肩の力を抜いたエドワードが、ふと視線を止めた。何か訝しがるかのようにアルフォンスをそろりと見る。
「………あのな、アル」
「うん?」
「お前、何か勘違いしてないか」
「何かって何が」
「いや、だから」
 エドワードはどう言っていいものか、と首を捻り、胡座の膝にがっしと両手を置いて肩を怒らせた。
「アルフォンス」
「………なあに?」
「オレが言っているのはだな、つまり、えー………」
「………早く言ってよ」
 磨くの途中なんだから。
「えー……つまりだな。……今度イーストシティに行くだろ?」
「うん」
「そのときにしようと思って」
「何を」
「………告白を」
「誰に」
「お前は今までの会話を聞いていなかったのか」
 
 いや聞いてましたけど。
 
 なかったことにしたかったんだよ、とくらくらと眩暈を感じながら内心で呟き、アルフォンスはかたん、と倒したオイル缶に視線を落とした。
「うわ、何やってんだアルッ!」
「あ、ごめん」
 慌てて缶を立て、ベッドから飛び降りたエドワードと二人でボロ布をひっ掴み流れたオイルを拭き、黒く汚れた床を洗面所と往復しながら何度も拭く。
「よし、綺麗になった!」
「ごめんねー、兄さん」
「いいけどさ。気を付けろよ」
 うん、と素直に頷いて、アルフォンスは乾いたボロ布を鎧磨き用セットの中から一枚取り出し減ってしまったオイルに浸け、途中だった腕を磨き出す。
「………おい」
 ごん、とエドワードが鎧の背中を叩いた。
「お前なかったことにしようとしてんだろ」
 
 なかったことにさせてください。
 
 アルフォンスは嫌々ながら兄を顧みた。
「………すればいいじゃない、告白」
「何その投げ遣りな返事」
「他に何を言えっていうのさ……」
「だからさー、もうちょっと相談に乗ってくれるとか」
「だってもう告白するって決めてるんでしょ」
「大佐のどこが好きなんだとか」
「……そんなのボクの知ったこっちゃないよ」
「いつから好きだったんだとか」
「いつでもいいから」
「お前冷たいぞ」
「いいからボクに構わないでお願い」
「なんかこう、兄さん盗られたみたいで寂しいなーとか」
 ずざ、とアルフォンスはエドワードから距離をとる。
「ななな、なにそれどんな発想!?」
 エドワードは胸を張った。
「お前に好きなヤツが出来たらオレは根掘り葉掘り聞くぞ!」
「なんで!?」
「ろくでもないのにお前盗られたら悔しいから」
 
 だからボクにも根掘り葉掘り聞けって!?
 
「やだもー嫌だ兄さん最悪! 変態! どっか行ってほんとお願い!」
 うわーん、と泣き叫び立ち上がろうとしたアルフォンスの腰に、エドワードががっしと抱き付いた。
「逃がすか! 少しは相談に乗れ!!」
「いーやーだぁッ!! お願いだからそういう相談は女の子が相手のときだけにしてッ!」
 ぴたり、とエドワードの動きが止まった。するりと腕が外れアルフォンスは扉まで退避して、壁にぺたりと背中を付けて兄を見る。エドワードは俯き、その表情は見えない。
「に、兄さん?」
「…………やっぱり変か?」
「うん」
 即答するとエドワードはがくりと肩を落とした。アルフォンスは少し慌てる。
「あ、ええと、でも何と言うか」
「そうだよな……大佐、男だもんな。オレも変だとは思うんだけどさ、スゲェ年上で男でしかもあんだけ性格悪くてさ」
「え、あの……」
「いいところっつったら顔がちょっといいくらいだけど別にオレそこだけ好きなわけじゃねーし、つか、見た目とかあんま重要じゃないし」
「み、見た目が重要なら男のひとは好きにはならないよね確かに」
 だよな、とエドワードは小さく頷いた。まだ顔は上げない。声は低く沈んだままだ。
「………大佐が好きだって気が付いたのって最近なんだけどさ、そしたらもういても立ってもいらんなくなってさ、……でも、やっぱ告白とかしたら迷惑掛けるよな…?」
 う、とアルフォンスは言葉に詰まる。
「び…吃驚はする、と思うけど……」
「絶対うんとは言ってくれねーよな」
 
 って付き合ってもらうつもりなわけ兄さん。
 
 このひとほんとに頭おかしいなに沸いてんのああ恋は盲目ってこれか、と言葉の活用法をひとつ理解して嫌な気持ちになりながら、アルフォンスは俯いている兄のつむじを壁に張り付いたまま見た。
「あ…あのさ、兄さん」
「………ん?」
「その、…告白してどうするわけ? ていうか、告白っていうより、こ、交際、をね、申し込みたいってことなの?」
「……告白だけしてどーすんだ」
「い、いや…だから、もう少し大人になるまで待つとか」
「その間に結婚でもされたらどーすんだ」
 
 結婚したいんですかあなたが。
 
 いやいやそれは無理だから、と自分で自分に突っ込んでアルフォンスは再び混乱し始めた。
 兄が何をしたいのかが解らない。
「あのさ、も、もし(有り得ないけど)大佐が付き合ってもいいって言ってくれたとして、でもボクらは旅をしているわけじゃない?」
「ああ」
 エドワードは顔を上げ、何を察した気になったのか目を丸くし、それからふっと眉を顰めた。
「馬鹿、当たり前だろ」
「な、何が」
「いくら好きなヤツが出来たからって、そっちにかまけてお前ないがしろにしたりするわけないだろ、オレが」
「い、いや、別にそんなことは心配してないんだけど」
「大丈夫、安心しろ。兄ちゃんが絶対元に戻してやるから」
「いや、解ってるんだけどね……」
「お前は余計な心配しなくていい」
 
 ていうか今まさに余計な心配掛けようとしているひとが言うセリフじゃないと思うんだけど。
 
「あのね、そういうことじゃなくて……あんまり会えないのに付き合ってるって言えるの、って、そういうことを訊きたいんだけど。大佐にずーっと待っててもらうの? それって可哀想じゃない? だったらあんまり負担になるようなことは言わないほうが」
「会うだけじゃねーだろ、恋人って」
「………まあ、想いが通じ合ってればそれはそうなんだけど…」
「いや、そうじゃなくて」
 
 あ、今物凄く逃げたくなった。
 
「キスとかセックスとか、そういうのもするもんだろ」
 唐突に沸き上がった逃走への誘惑にアルフォンスは思わずノブを掴む。しかし扉を開き廊下へ退避する前に爆弾は投下され、アルフォンスはがっしゃんと膝を突きついでに両手も突いて項垂れた。
 
 聞いてはいけないことを聞いた気がする。
 
「何ショック受けてんだお前」
「…………………。………兄さん。ボクらまだ子供」
「子供ったってオレ今年で14だし」
「いやまだ子供! 10年早いから!! ていうかッ……き、キスはともかくどーやって男の人とせっ、セックスとか…っ」
 エドワードはぱちぱちと瞬いた。
「出来るだろ?」
「出来ないでしょ!?」
 
 それともボクの性交の定義が間違っているんだろうかセックスって交尾って意味じゃないんだろうか動物だってつがいじゃなきゃ子供は出来ないし雄同士で交尾は普通しないしってそう言えばたしか猿とか犬ならマウンティングとかあるんだっけでもあれだってフリだけだしていうかどこに挿れるのって挿れるとか言うなよボク。
 
 ぐるぐると考えてアルフォンスは恐る恐る顔を上げた。
「………あのね、兄さん」
「あん?」
「………セックスって交尾って意味じゃないの」
 エドワードはぽかんとアルフォンスを見つめた。
「交尾って、お前……」
「あ、ごめん間違えた。性交って意味じゃないの? 他になにか意味があったっけ」
「………意味があろうがなかろうが性交という意味で言ったんだが」
「だからさ、出来ないでしょ、同性じゃ」
「出来るっつの」
「どうやって」
「だから、あんだろ穴が」
「どこに」
 
 ああボクは今確実に墓穴を掘っている。
 
 アルフォンスは泣きたくなった(というか一刻も早くここから逃げたい)。思わず訊いてしまった自分が憎い。
「だからさあ」
 そんなアルフォンスに気付かずすっかり物を知らない弟に知を伝授する兄の顔で、エドワードは言った。
「ケツだっつの。ケツの穴」
 
 もーほんとヤダこのひと。
 
 「なにそれ」、と半分泣き声で呟き、アルフォンスは肩を震わせる。
「無理でしょそんなの、絶対無理だよ」
「出来るんだってば」
「だって排泄するとこなんだよ!? 膣みたいな伸縮性はないだろうしそもそもバルトリン腺だってないんだから無理だってば!」
「だーかーらー、そういうのは道具を使えばいいんだっつの」
「道具ってなに!?」
 ほとんど悲鳴の問いに、エドワードは例えばさー、と首を捻った。
「んー、と、オリーブオイルとかみたいな食用油なら人体には影響しないし」
「………油!?」
「ジェルとかでもいいんじゃねーかな。クリームだとどうなんだろうな?」
「いやどうなんだろうなとか言われても」
「そりゃ女相手するよりは手間は掛かるだろうけど、そもそも排泄出来るんだから伸縮に関しては問題ねーんだよ。準備すれば」
「…………………」
 アルフォンスは僅かに黙る。ぐるぐると人体錬成理論を立てる際に読み漁った医学書の内容が頭の中を回るが、当然目先が違うのだから今ここでぴたりと当て嵌めることの出来る知識は出て来ない。
「………ていうか兄さん、そういうのどこで覚えて来たの」
 ぐるぐると考えた挙げ句、アルフォンスは取り敢えず当たり障りがなく最も妥当性のあると思われる質問をした。エドワードはいや、と頭を掻く。
「医学書と、あとはまー、なんだ、その…………うん」
 
 なに、その察しろよと言わんばかりの「うん」は。
 
「兄さん不潔!」
「な、なんだそりゃ!?」
「不潔! さいてい! バカ! 子供のくせに!!」
「オメーだって子供だろうが!!」
「ボクは子供の領分守ってるもん!!」
「子供の領分なんつー子供はおかしいぞ!? つか、なんでひと好きになるのが不潔なんだよ!」
「違うもんそれ絶対違うーッ!!」
「何が違うんだ言ってみろコラ!!」
「だってそんなのしたいだけの悪い男のひとみたいじゃん!!」
 大きく目を瞠ったエドワードに、アルフォンスははっとした。飛び出た言葉を回収できないことを強く悔やむ。
「あ、………兄さん、あの」
「………別にしたいだけとかそういうんじゃねーよ」
「うん! 解ってる! ごめん、その、ボク、吃驚して」
「解ってる」
 そう言いながらも肩を落として俯く兄に慌て、アルフォンスはがしゃんと立ち上がって兄の元へ歩みおろおろと様子を窺った。
「に、兄さん、ね、ごめんね」
「……いいって。お前まだこういうとこ凄い子供だしな」
「……………。……なにそれ」
「恋愛感情って綺麗なだけじゃねーってこと」
 
 れんあいかんじょう。
 
 思考を上滑りした言葉を慌てて掴まえ頭にぶち込み理解して、理解しなければ良かったとアルフォンスは思った。
 
 改めて言われると破壊力のある言葉だなあ……。
 
「…………兄さんは女の子を好きになるみたいに大佐が好きなんだね」
「まあ、うん」
「顔見たり声聞いたり手を繋いだりキスしたりしたくなるような好きなんだよね」
「そうだけど」
「………だけどね、兄さん」
 厳かに告げる。
「大佐って、男のひとなんだけど。しかもたしか27歳とか28歳とかの」
 エドワードはきょとんとアルフォンスを見上げた。
「解ってるけど」
「……普通じゃないのも解ってるよね」
「解ってる。つか、さっきオレそう言わなかったか」
「うん、聞いた気がするけど、どこまで本気で解ってるのかなって思って」
「なんだそりゃ」
「ちょっとシミュレートしてみようよ、兄さん」
 アルフォンスはがしゃん、と座り込んで片胡座を掻いているエドワードに首を傾げて見せた。
「例えばさ、兄さんが男のひとに告白されたらどうする?」
「巫山戯んなっつってぶん殴る」
 
 いやちょっと待って。
 
「それじゃシミュレートにならないよ兄さん……」
「だって気持ち悪ィだろ」
 
 そっくりそのまま返していいですかその言葉。
 
 アルフォンスはこのバカ捨てて出て行ってもいいですか母さん、と心の中の母に尋ね困ったような苦笑を貰いなけなしの兄弟愛で立ち上がるのを堪えた。
「だったらさ、大佐にも「巫山戯るな」って言われるとは思わないわけ」
「有り得るよな、それは」
 
 解ってんのかよ。
 
「じゃあなんで告白しようとか思うわけ……」
「告白してみなきゃ解んねーじゃん。もしかするといいって言うかもしれないし」
「いや言わないと思うけど……あのひとすっごいモテるんでしょ。いつも違う女のひと連れてるって聞いたけど」
「いつも違うっつーことは本命じゃねーってことだろーが」
「ほ、本命になりたいわけ」
「ッたりめーだろ。浮気相手のひとりとか冗談じゃねーよ」
 うう、とアルフォンスは唸る。
「で、でも、いいとは言わないと思うよ……?」
「そうかもな。けどオレが大佐を好きだってのは伝えられるし、そしたらオレを見る目も変わるだろうし」
「うん、変わるよね」
「そしたら後から好きになってくれるかもしれないだろ」
 
 いやそういう風に変わるんじゃないと思うんだけど。
 
「……決意は固いんだね、兄さん……」
「おう」
「じゃあ、もう止めないよ」
 
 さっぱりとフラれて来てください。そしてまともな道に帰って来て兄さん。ボク遠くで待ってるから。
 
 頑張るな! と満面に笑みを浮かべる兄にアルフォンスははは、と疲れた笑いを返した。
 
 
 
 告白したけど返事は保留された、と兄が報告してきたのはその後一週間して東方司令部へ寄った日で、エドワードの事細かな状況説明にアルフォンスはその混乱を思い恩人である青年へと深く同情した。
 
 その同情が混乱へ変わるのは半年後、すっかり日も高くなってから宿へ帰って来た兄の、嬉々とした初体験報告を無理矢理聞かされてから(もうどっちが何でもボクには関係ないから兄さん)。
 
 兄さんは物凄く変なひとですけど、大佐。
 あなたも相当変です。
 
 アルフォンスはああ今肉体があっても多分涙は出ないんだろうなあ、と思った。
 多分出るのは、乾いた笑い声ばかり。

 
 
 
 
 
 
 
『傍観者の憂鬱』はリクエストをくださった繭流さまのみお持ち帰り・転載可です。
他の方のお持ち帰り・転載などはご遠慮ください。
転載について


リクエスト内容
「『睡眠不足』前告白前ぐだぐだエドと迷惑アル」

依頼者様
繭流さま

■2004/8/16
ぐだぐだっぷりが現れたのか無駄に長くなっちゃいました……そして下品ですみませ…! 甘露みたいな雰囲気にしたかったんですがちょっと笑いが足りないですなー。ただただアルが気の毒な話に。……可哀想に(おい)。
こ、こんな具合でいかがでしょうか繭流さん…(どきどき)。

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