松永様、松永様……、と甘えた声に呼ばれ、久秀は瞼を上げた。庇の影から差す陽は障子を透かし、柔らかく布団の端を温めている。
夏の盛りだ。外は次第に茹だる様な熱を上げているのだろうが、方角の関係か、此の見世の裡は未だ、ひやりとした夜の空気を気怠い中に留めている。
「ふふ、もう陽も高う御座いますよ……」
媚びる声を聞きながら、俯せに腕枕をしていた格好のまま、久秀は寝不足の頭を巡らせて枕元の煙草盆に掛けられた長煙管を見遣った。手を伸ばし羅宇を掴み、少しばかり揺らす。金の雁首が、綺羅と光る。
「お吸いになりますか?」
「いいや、煙草は嫌いでね……」
寝起きに掠れた甘い声で返せば、妓はあら、と媚びた声を上げた。
「お先に言って下されば、下げましたのに。お嫌でしたでしょう」
「いやなに、吸わぬだけだ。……此れは、好い煙管だね」
「お客さんからの、貰い物ですよ。ふふ、妬いて下さる?」
しなだれ掛かる妓は、昨夜散々に甘い言葉を囁いた所為かすっかりとその気だ。金や物を絞れるだけ絞ろうと、その魂胆がありありと見える。
夜の帳の下、浮き世の夢よと粘度の高い甘く饐えた空気を共に吸うのも一興とは言え、それは飽く迄闇の下での話、朝の光に晒すものでもないな、と削がれた興に思いながら、久秀はそうだね、と笑みを湛えたままの唇で囁いた。
「君には相応しくないな。君にはもっと清しい……そうだな、銀がいいだろう。つるばらの細工を施した、延べのものが好い。後で、届けさせよう。昨夜は、楽しかったからね」
お礼だよ、と言えば、妓は瞳を輝かせた。その、目元から僅かに剥げた化粧の奥に疲れが覗く。目の縁が赤く、白目が濁る。
とろりとした瞳に目を細めて、久秀は妓の細く柔らかな項を引き寄せ囁いた。
「………良い粉も、届けさせよう」
妓は目を瞠る。久秀は微笑して、身を起こした。
「さて、戻らねばなるまい。支度を、手伝ってくれるかね」
化粧の下の、色褪せた死相を見ながらまた来るよ、と名残を惜しんでその髪に珊瑚の簪をそっと足し、そうして部屋を出た時には四ツ刻を回っていた。
少々長居をしたな、と考えながら簪を頻りに気にして恥じらいながら付いてくる妓を伴い吹き抜けの廊下を歩いていると、向こうから引っ掻き傷を付けた若い妓がぷりぷりと怒りながら此方へとやって来た。
「松永様! あのお客さんったら、酷いわ!」
正面からぶつかりそうになったのに気付いたか、顔を上げた妓は久秀と見ると、未だ幼さの抜けぬ可愛らしい顔を桜色に染めて両手を振り回し抗議した。
「松永様の紹介だからと追い出さずにおりましたけど、本当ならお母さんに言って、叩き出して貰う所だわ! 酷過ぎます! 見て、此れ!」
「此れはまた……、」
示された頬の瘡蓋さえ浮く爪痕に、久秀は眉尻を下げて苦笑した。
「済まなかったね。連れが、迷惑を掛けた様だ」
言って、懐から取り出した包みをそのままふっくりと柔らかな手に握らせると、その重さに目を丸くした妓は、喜色を浮かべていそいそと袂へ落とした。
「さて、彼は部屋かね」
言いながら歩を進め、連れの部屋を覗けば布団の上に胡座を掻いて何処から貰ったものやら握り飯を頬張っていた野生児が、ぐり、と此方に顔を向けた。
「腹へった!」
「………今食べているそれは、何かね」
「朝飯前の腹ごしらえだ!」
呆れた笑みを含んだ声に悪びれず返して、武蔵は指を舐めてひょいと立ち上がるとずかずかと部屋を出た。そのままどしどしと廊下を鳴らして歩く背中に付きながら、久秀はやって来た女将に金を渡す。
「また来よう」
言って、頭を下げる見世の者等への声掛けもそこそこに、久秀はどんどんと通りを行ってしまう武蔵の後をゆったりと追った。大通りの建物の影から出た途端、さあと目の前が広がる様に眩く白を増し、焼け付く熱を感じる。真夏の熱だ。
瞳を細めて一瞬息を詰め、視界の恢復と共にふいに耳に届いた蝉の声に、久秀は口元を緩ませた。
虚しく健気な命は、此の夏の終わりを待たずに脆く死ぬ。長い時間地に潜み眠り続け、命を繋ぐ、ただそれだけの為に地上に顕れ、そして死ぬ。
うつくしい生き物だ、と久秀は思う。しかし前を行く少年はそうは思うまい。蝉は食えぬと、その様な事を言うかもしれない。
昨日街中で盛大に腹を鳴らしている所へ通り掛かり、飯を食わせろと言うので手っ取り早く欲という欲を全て満たせる場所へと連れて来てみたが、この調子ではどうやらお気に召さなかったらしい。
「卿は諸国を歩いているのだったな」
「おう」
「……私が偶然行き掛かったのも、奇跡の様なものだ」
「よくわかんね」
「食事は出来たかね。まさか、昨夜から握り飯だけと言うわけではないだろう」
「食った。酒もたらふく飲んだ。けど、せっかく気持ち良く寝てたっつうのに、あの女がちょっかい掛けてきやがって」
腹立ったから引っ掻いてやった、と鉤爪のふりで曲げた指を示し悪戯に得意げに笑った少年に、久秀は微笑を浮かべる。食事と酒と寝床さえあれば、女は要らなかった様だ。
未だ幼き故か、獣の欲の時期ではないのか、と考えながら、久秀は通りの真ん中を歩いていた武蔵が、ふいに暖簾の一つに引き寄せられたのを見て爪先をそちらへ向けた。
熱心に覗き込んでいる蒸籠には、蒸し立ての饅頭が並んでいる。
「食事に行くのではないのかね?」
「此れでいい」
ふむ、と瞬き、一つ二文と書かれた札と蒸籠の中を半分ほど埋めている饅頭を見る。朝餉代わりに持って行かれたものか、午には未だ少し早いと言うのに大分売れている様だ。
此れからまた新しく蒸した物を追加するのかも知れないが、それを待っている暇はないだろう、と久秀は今にも手を伸ばして齧り付きそうな武蔵を横目に財布を出した。
「幾つ欲しいのだね?」
「全部だ!」
苦笑をし、では主人、と一両を手渡せば、饅頭屋は目を白黒とさせた。
「す、すんませんね、旦那様。釣りが………」
「嗚呼、いらんよ」
「へ、へえ、毎度!」
饅頭屋は慌てて蒸籠の中身を包みに掛かった。その隙に手を伸ばした武蔵が、片手に一つずつ掴んでもぐもぐと頬張る。立ち去らずに居るのは、残りの饅頭の包みを受け取る為だろう。
空腹だったのだな、全く獣の様だと目を細めて、松永は差し出された包みを横から攫った武蔵に続いて暖簾を潜った。背中にまたのお越しを、と主の弾んだ声が掛けられる。
「美味いかね?」
「うめえぞ」
両手の二つはあっという間に食べてしまったらしい武蔵は、今は片腕に包みを抱えて次々と饅頭を取り出しては、汗を掻きながら咀嚼している。味わっている様にはまるで思えないが、しかし料亭の懐石などを食べさせても、食い付きの良さは同じであれこうも楽しげではないな、と久秀は目を細めた。
ひとつたった二文、久秀からすれば取るに足らない安価な饅頭売りの品だが、それが此の少年の口には合う様だ。
甘いものだから好きだと言うわけでも無さそうだが、と以前京の菓子を与えてみた時の冴えない反応を思い返しながらがつがつと頬張る度に動く頭を眺め、それがくり、と空き家と思しき荒れ屋の庭に興味を移したのを真似て、久秀は首を巡らせた。荒れた庭は広く、茫々と夏の草木が生い茂った向こうにちらりと破れ家の屋根が覗く。
大通りの終わり、路地の合間からふいに覗いた郊外に、これは立派な廃墟だな、もしや廃寺であろうかと考えていると、何に興味をそそられたものかくんと鼻を動かし、武蔵は真っ直ぐに壊れた垣根へと向かった。
退廃趣味でもあるものか、しかしその様な無駄な情緒は持ち合わせておらぬ少年だと思ったが、と一つ瞬いて、久秀は大股で歩く武蔵の後をゆるりと追う。
人通りはなく、路地へと踏み込めば日陰の空気が夏の日差しに灼かれた頬をひやりと冷ます。大股で歩く武蔵は既に藪の中に紛れている。
久秀は構わず、後ろ手を組んだまま割れた飛び石をゆっくりと渡った。
伸びた細い枝を掻き分けると、つんと青いにおいがした。山椒だろう。女の掌ほとの大きさの艶やかな揚羽が、忙しなく翅を羽撃かせひらりひらりと踊る。
ちら、と籠手だけを嵌めた剥き出しの背中と、逆さにした箒の先の様な頭が殆ど野生の薔薇の合間から覗いた。何かを見上げている様だ。
「───柿の木か」
青々と茂る厚い葉に呟いて眩い木漏れ日に目を細め、久秀は違和感にふと口を噤んだ。
濃い緑の合間に、幾つもの橙が覗く。よくよく目を凝らせば、薄黄色の小さな花もまた、此の暑さの中健気に花弁を開いている様だ。
まるで恥じらいながら身を開く乙女だな、と考えて、久秀はふむ、と呟いた。
「狂い咲きか……実まで熟しているとはね。今の時期なら、花は落ちて未だ未だ青い実が、付いているものだが」
久秀の呟きなど我関せずと柿の木を見上げていた武蔵が、ふいに身を屈めて何かを拾った。
何事か、と見ていれば、武蔵は拾ったそれを柿の木に向かって投げ付ける。どうやら小石の様だ。
しばらく石を投げ付けていた武蔵は、やがて「ちぇっ」と舌打ちをすると柿の木へと手足を掛けた。
「柿の木は脆い。無用の怪我をしたくなければ、止したまえ」
制止の声を上げた所で、無論聞く筈もない。
やれやれ、と薄く嘆息し、久秀は後ろ手を組み、再び柿の木を見上げた。
初夏の頃に花を付け、夏の合間に青い実を次第に膨らませて秋に漸く橙に熟す筈の柿の木は、花も葉も実も同時に付けて、目一杯両腕を広げ天を受け止める様に枝を広げている。木漏れ日の落ちる木の下に居れば、涼しい風が吹いた。
随分と古い木だ。地面を這う節榑立った根には、黄緑の苔が貼り付いている。
明らかな死に花だ。
最期の力を振り絞り、死に花を咲かせ実を付けた残された力の全てを込める柿の木は、恐らく秋を待たず夏の終わりには死ぬのだろう。
あわれなものだ、と久秀はふと唇に笑みを刷いた。先程の阿片に冒された女郎が瞼裏を掠める。彼れもまた、死相を浮かべた酷くあわれな貌をしていた。
金が欲しいのか、薬が欲しいのか、最早判らぬ様になっているのだろう。初めは恐らく、金の為に、欲の亡者に身を窶す屈辱を鈍らす為に、含んでいたものだろうが。
つらつらと詮無い事を考えていると、するすると猿の様に登っていった武蔵が、腕一杯に柿の実を抱えて降りてきた。既に一つ咥えたまま下段の枝に片手でぶら下がり、みしり、と大きく撓んだ枝が折れるより先に飛び降りる。
「………卿が剛胆な男である事は承知だが、それは死に花が付けた実だ。そんな物を食べるものではないよ」
躯に障りがあったらどうする、と真摯に続け、久秀はお構いなしに咀嚼をしている武蔵の旋毛を見下ろした。小柄な少年だ。未だ幼い程に若く、青年とは決して呼べぬ。
「ん、」
ふいに、きらりと光る真っ黒な目が此方を見たかと思えば、艶やかな実を差し出された。
その実を見詰め、顔を見遣ればぎょろりと黒目がちの目を動かした武蔵は、汁に濡れた口元をくと引いて、にかっと明け透けに笑った。
「うめえぞ!」
久秀は柿を受け取った。温い実は存外しっとりとやわく、掌に収まる。武蔵は渡すだけ渡したならば満足したものか、再び柿に齧り付いた。
夢中で柿を頬張る武蔵を眺め、久秀は親指で皮を撫で、ゆっくりと齧る。つうと、実を滑り汁が滴った。
渋みがざらりと上顎を撫でるが、温い実はそれでも酷く甘い。此れではすぐに鳥にでも取られてしまうだろうに、と思いながら木を見上げるが、しかし青い葉に見え隠れする橙の数は、未だ未だある様子だ。
鳥も獣も獲らぬ様な実を。
ふ、と微かに笑みを洩らして、久秀はゆっくりと柿を食べた。洗練されていない、渋みの中から甘みを探すしかない実を食す事が、けれど酷く嬉しい様に感じる。
決して懐かない獣の様な少年が分け与えてくれたものだからだ、と考えて、漸く手懐けた事が嬉しいのか、唯の満足感だろうかと思う。
(………違うな)
単なる好意だ、と久秀は胸の裡で呟いた。
見遣れば武蔵は、大振りの種をぷいと吐き出した所だった。何が面白いのか、やたらと遠くへ飛ばしている。意味などあるまい。ただの遊びだ。命の遣り取りですら楽しいかどうか、気に入るかどうかで済ませてしまえる少年だ。
非常に単純で、その獣の単純さが──否、獣など及びも付かぬ程の自由さが、久秀を感嘆させる。
好ましいな、と考えて、ふと此の好ましさが増していったのなら、いずれ己は彼に固執し喪失を怖れる様になるのだろうかと思う。
ぞっと、背筋を悪寒が駆け抜けた。
「───く、」
ふいに喉を鳴らした音に、武蔵が怪訝そうに此方を見た。ぱちくりと瞠られていた目が、むっと不機嫌に細まる。
「何笑ってんだ」
「いや、何……愉しくてね」
「はあ? へんな奴」
ぷ、と飛ばされた種が、久秀の足下に落ちた。上手く当たらなかったのが悔しいのか、武蔵は不満げに舌打ちをして、ぽいと柿の蔕を投げ捨て残りふたつだけになった柿は腰に下げた袋へと無造作に突っ込む。
「それでは、柿を潰して汚すのではないかね」
「おれさま、そんなへましねえ」
横顔を此方に向けたまま、夏の真白な程の日差しに照らされた躯は未成熟の細さを持っている。若く瑞々しい筋肉が薄く凹凸を浮かす腹は、先程から立て続けに食べた食事とも呼べぬ食べ物で、鳩尾の辺りばかりが膨らんでいた。
しかし鼻先に溜まった汗を光らせる顔は精悍そのものだ。未だ童の殻を被ったままの滑らかな輪郭に、凛々しさを乗せている。育てば、どれだけの武人となるかも知れぬ。
そう、なる前に。
成熟した雄のうつくしさを見る前に、愛しさが、喪失への恐怖が募り切った頃に、此の細い躯の隅々までを満たす命を手折ってしまったのなら。
それはどれだけの絶望、どれだけの空虚であろうかと久秀は思う。彼の未来、彼の命、続いてゆく筈の彼の路を、たった一突き、此の腰に下げた剣を裸の胸に差し込むだけで、全てを無かった事にしてしまえる。
時間を壊す、と言う事は、過去を壊すばかりの事ではない。しかし未来を壊す、そのあやふやで誰もが見た事のない、ただ夢想の中にばかり描く時間の破壊は、その夢がうつくしければうつくしいだけ、喪失感は増すものだ。
しかし武蔵は孤独な獣だ。孤独な野良犬や群れから外れた一匹狼が死んだとして、誰が悲しむ事もない。彼の命が絶えたとして、誰も悲しむ者はない。
彼の剥き出しの命に愛しさを覚える、此の、自分の他は、誰も。
「───いや実に、虚しいな」
呟き、半分ほど齧った柿を手から落とすと、雑草の生い茂る足下にぼとり、と思うよりも大きな震動が響いた。
ごろ、と僅かに転がった柿は食い差しから甘い匂いを立ち上らせているのだろう。直ぐに、一匹の蟻が触覚を蠢かしながら取り付いた。ぷん、と近くを飛ぶ蜜蜂が、甘い匂いを振りまいているのだろう武蔵にまとわり、ばちんと無慈悲な手に潰される。
「いって!」
「刺したか。どれ、」
先程までの、何処かを真っ直ぐに見据えていた精悍な横顔などなかったかの様に、くしゃりと顔を歪めた腕白小僧の顔で大袈裟に痛がる手首を掴むと、獣は振り払いもせず大人しく掌を差し出した。
引き寄せ、ぽつりと刺さった小さな針を指先で絞り、未だ甘みの残る口で吸い付く。潰した蜂の体液か苦みを感じ、同時に塩辛く汗の味がした。
蜂の毒液ごと唾を吐き、引こうとする手を離さずに、久秀は懐から取り出した布でぐるりと傷を包んだ。
「余り、無造作な事をするものではないよ。卿が思うより、世の中というものは他の命に優しくはないのだ」
解放すると、手を下ろした武蔵は、空言に毒突きもせずにじっと久秀を見上げた。久秀は首を傾げる。
「どうしたね?」
「おめえ、何かへんだな」
大きく瞬けば、武蔵はぐるりと踵を返して大股で庭を横切った。久秀は一拍遅れて付いて歩く。
「おめえはいっつもわけわかんねえことばっかり言う」
「それ程、難しい事を言ったつもりはないが」
「虫なんか怖くねえ」
「蜜蜂は兎も角、雀蜂などには手を出してはいかんよ。卿がどれだけ強くとも、小さな針の毒には敵わぬ事もあるのだ」
「ばかにすんな」
唐突にぐるりと振り向き、眉間に皺を寄せて武蔵はぺっぺ、と唾を吐いた。
「おめえなんかより、おれさまの方が強えんだからな! おめえもおめえんとこのへんなお面の連中も、みーんなおれさまがぶっ倒してやる!」
おぼえてやがれ! とまるで悔し紛れの捨て台詞の様な叫びを受けて、久秀はゆっくりと足を止めた。
武蔵は再びくるりと踵を返し、今度こそ振り返らずにどんどんと廃屋の向こうへと歩いて行く。破れ家に掛かる光が、強く少年の影をその漆喰の壁に浮かせた。
「───また、驚かされたな」
久秀は純粋な驚きに感嘆の息を吐き、思わず頬を綻ばせた。
「彼には、私の頭の中が見えるのか」
いつか彼の死を此の手に蒐集してやろうと──その湧き上がる虚無を夢想していた事が、何故か知れたのだ。
全く彼は凄い男だ、と小さく声を出して笑い、久秀は途端目映さを失った景色の中を、町の方へと踵を返した。
20110704
初出:20080816
文
虫
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