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00.お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。



名前:風樹夙
サイト名:むしこぶ

 
 
01.告白 【70文字】…伊達主従(6/16)


 それなりの抵抗を予想して、どう押し倒そうかと考えていれば間髪入れず承知され、口説き文句の一つも言わせてくれない傅役に、どうも素直に喜べない。

 
 
02.嘘 【69文字】…幸村(6/16)


 某の忍びでござる、と言い切って、酷く後ろめたくなった。
 それを見透かされたか間もなく下賜を賜って、嘘は誠になったものの、嘘は嘘に違いない。

 
 
03.卒業 【62文字】…瀬戸内(6/16)


 何処へと訊かれ、風の吹くままと答えると、彼は六年、と言った。
「我はあと六年、此処に居る」
 陸に待つ相手が居てこそ、海の男。

 
 
04.旅 【60文字】…慶次(6/16)


 雨で墨の流れた地図で鼻をかみ、ぽいと投げ捨てさあて、と木の枝をぽとんと倒すと左を示したので、今日は大凶、と右へと進んだ。

 
 
05.学ぶ 【71文字】…政宗(6/16)


 配下の者は皆己の異国語を真似るのに、右目だけは使わない。
 けれど己は知っている。彼れがこっそり、鍛練している事を。(だからまだまだ知らんぷり)

 
 
06.電車 【69文字】…真田主従と政宗(6/18)


 偶然だね、と目を丸くして、偶然だな、と笑った相手とはしゃぐ連れを眺め、溜息。
 お互い終電ギリギリ、同じ家に帰るのに、それは必然って言うんだぜ馬鹿共。

 
 
07.ペット 【67文字】…真田主従(6/16)


 膝で伸びている猫の腹をぐりぐりと擽っている橙の髪に手を伸ばし、わしわしと撫でてやれば、ぶるりと振り払われた。
 なかなか構い時が難しい。

 
 
08.癖 【53文字】…伊達主従(6/16)


 遅れて来た癖に、わざわざ右側へと割り込む。
 お前の席は左側だと示せば、ならば詰めて下さいと真顔で言われた。

 
 
09.おとな 【66文字】…武田軍(6/16)


 やっぱりねえという顔で、口でははい承知、と頷いて、さっと消えた忍びに彼れも大人になったものだと呟けば、弟子が怪訝な眼差しを寄越した。

 
 
10.食事 【75文字】…武田軍(6/19)


 共に飯を食えとは何の冗談だ、とふと二人の手元を見れば、大方平らげた旦那と、ちまちま魚をつついてる大将。
「貸して下さい」
 骨取れないなら早く言ってよ。

 
 
11.本 【62文字】…東西兄貴(6/17)


 伴天連の元で手にした書物を異国語に詳しい竜の元で紐解き、朧気に数行解読した所で溜息と共に伸ばされた手に奪われた。
「逆様だ」

 
 
12.夢 【69文字】…上杉主従(6/17)


 ぽろぽろと涙をこぼして目覚め、忍びの癖に深く寝入った事を恥ながら止まらない涙を拭っていると、美しい腕に抱き締められた。
 今が夢に違いない。

 
 
13.女と女 【61文字】…まつと濃(6/17)


「必ずお授かりしますとも」
 自らも子を持たない女の目は健やかに澄んで、此れ程天に愛されては、人の子など授けては頂けまいと。

 
 
14.手紙 【72文字】…いつき(6/17)


 はるがきました、たうえのしたくにおおわらわ。
 その一行に一日掛けて、誰に託す事もなく行李へ仕舞う。
 田植えの支度に大わらわ、文を届ける暇もない。

 
 
15.信仰 【67文字】…秀吉(6/16)


「仕様のない人」
 慈悲の微笑で許されては、償えぬ罪を永劫孤独背負わねばならず。
 愛した女は天の如く慈悲深く、また天の如く残酷であった。

 
 
16.遊び 【76文字】…真田主従(6/16)


 それ開けないで、と止められた時にはもう行李の蓋を持ち上げていた。わんと中から飛び出した蜂を煙で酔わせて蓋を閉められ、何だと問えば、唯の遊び、と睨まれた。

 
 
17.初体験 【59文字】…お市(6/18)


 励まされて果敢に挑戦したものの、栓抜きは滑って瓶は揺れ、中身は服と絨毯に半分飲ませて叱られた。
 簡単だって言ったのに。

 
 
18.仕事 【88文字】…蒼紅と佐助(6/20)


 炎と雷が鬩ぎ合い、辺りは天変地異の様相で、愉しいのは渦中の二人だけ。
 此処に飛び込むなんて狂気の沙汰だと判っちゃいるけど。
「お仕事、お仕事」
 仕事でもなきゃ、やってらんねえ。

 
 
19.化粧 【65文字】…政宗といつき(6/18)


 ほらと寄越された二枚貝、薬かと思えば真っ赤な紅。
 首を傾げて見上げれば、瞬いた一つ目が苦笑して、次は鏡を持って来ようと頭を撫でた。

 
 
20.怒り 【73文字】…光秀(6/18)


 お可哀想、と嘆かれて、酷く愉快になって思わず殺した。
 生首の目から涙が、唇から血がぽろりとこぼれて、けれどちっとも美しくないのは何故と首を傾げた。

 
 
21.神秘 【65文字】…元就(6/18)


 つと、空と海との境が割れる。一瞬の閃光に、皆一様に眩む目を細め呼吸すら忘我する。
 此れぞ天の姿、帝も人も獣も虫も、須く傅くべき光。

 
 
22.噂 【70文字】…政宗と佐助(6/18)


 そりゃ悪かった、責任取って嫁に貰おうかと言えば凄い顔で睨まれた。
 それが可笑しかったので、噂は噂、と赤い携帯へフォローのメールをしてやった。

 
 
23.彼と彼女 【71文字】…佐助とかすが(6/17)


 俺の事好きなの、と訊くので、お前にはアレがいるだろう、と答えると、でもお前の方が好き、と言うから引っぱたいてやった。
 あっちの方が大事な癖に。

 
 
24.悲しみ 【60文字】…真田主従(6/18)


 遣り切れないと溜息を吐いて、ゆるゆると頭を振る主の肩を叩く。
「また買えばいいでしょ」
 落とした団子は蟻にでもあげなよ。

 
 
25.生 【78文字】…慶次(6/20)


 盛り土に若木の枝を挿した所で山の合間から光が差した。
 土の下では光は届かないのだなと思えば嗚呼朝まで待つべきだったと後悔が湧いて、嗚咽が一つ、喉を鳴らした。

 
 
26.死 【70文字】…真田主従(6/20)


 死んでどうする、と叱り乍らの手当てを受けつつ、死なずしてどうする、と胸の裡に思う。此の忍びは、地獄を畏れ過ぎている。
 現が天でもあるまいに。

 
 
27.芝居 【58文字】…幸村と慶次(6/19)


「芝居なんか、もうあんたとは来ない」
 顔を拭った連れは、席を立とうとしないまま鼻を啜った。
「つられて泣いちまうよ」

 
 
28.体 【80文字】…佐助とかすが(6/19)


 煩わしい、と言うので、でも其れがなけりゃ軍神に触れないぜと言えば、黙り込んでしまった。沈黙を良い事に髪を撫でれば拳が飛んで来て、元気じゃないの、と小さく笑った。

 
 
29.感謝 【69文字】…前田家(6/17)


 ふらっと帰った甥っ子に珍しいと驚けば、へへと笑って満開の山桜の枝を差し出された。
「日頃の感謝」
 そう言えば今日は、甥っ子の生まれた日。

 
 
30.イベント 【78文字】…武田軍(6/20)


 月明かりの下、殴り合っている師弟の声に、虫の声など消えている。
「何処が暑気払い?」
 離れた場所で杯片手に汗を掻く武田家臣を眺め乍ら、飛んできた火を踏んだ。

 
 
31.やわらかさ 【75文字】…真田主従(6/19)


 咎める声を無視して背に寄り掛かると、ふいに背もたれが失われて驚いた。
「邪魔だっての」
 胡座を掻いたまま半分に折り畳まれた忍びが、己の下で睨み付けた。

 
 
32.痛み 【60文字】…真田主従(6/19)


 痛い痛いと喚く声が喧しい。戦となればどれだけの怪我でも平気な癖に、此の堪え性の無さは何なのだ。
 たかが耳掻きだっつうの。

 
 
33.好き 【74文字】…真田主従(6/19)


 頬を触って髪を掻き回して唇をくっつけて首を傾げると、怪訝な顔をされた。
「胸が高鳴る筈なのだ」
 なのに変わらぬと言えば、真っ赤な顔に笑い飛ばされた。

 
 
34.今昔(いまむかし) 【71文字】…政宗と佐助(6/19)


「彼の頃は良かったねえ」
 目を細めてしみじみと呟いて、「何で俺様此処にいんだろ」と心底不思議そうに此方を見る。
 其れを俺に問うか、Honey。

 
 
35.渇き 【76文字】…長曾我部軍(6/19)


「俺は決めた」
 甲板にごろごろと日干しになりながら、羅針盤見てる兄貴へ向かって辛うじて視線だけを向ける。
「世界の地図を手に入れる」
 羅針盤、逆様です。

 
 
36.浪漫 【74文字】…武蔵と慶次(6/16)


 口を開けて雲を見ていた子供が、くるりと振り向き屋根から降りろと言い置いて去った。
 間もなく起こった地震に、地震雲ね、と迫る地面を見ながら男は思った。

 
 
37.季節 【70文字】…信玄と佐助(6/19)


 忍びは雪を嫌い、雨を好むと言うが、うちの忍びは湿気を嫌う。
「土産の団子が濡れちまう」
 梅雨の時季は傘を差して歩くから、早馬よりも文が遅い。

 
 
38.別れ 【69文字】…蒼紅(6/19)


 誇張でも感傷でもなく、生涯此れ以上の出会いはないと言い切れる。
「      」
 笑いながら呟いて、唇の端に昂揚の余韻を残したままの亡骸に背を向けた。

 
 
39.欲 【72文字】…小十郎(6/19)


 貴方の天下、貴方の生命、貴方の眼差し、貴方の呼ぶ声、貴方の背中、貴方の右目で在り続ける事。
 此の貪欲、何れ天に裁かれよう。
(だから其れ迄は共に)

 
 
40.贈り物 【70文字】…幸村(6/18)


 寒いと思えば雪の様で、布団を抜けて白い息を吐きながら縁側へと出ると、足下に真っ赤な南天の実の付いた枝が。
 昨夜の内に戻った忍びの、その足跡。

 
 
 

お題提供元:文章修行家さんに40の短文描写お題